井出隆夫先生、ありがとうございました


訃報

 2017年(平成29年)7月24日、『にこにこぷん』の作者の井出隆夫先生(山川啓介)がお亡くなりになりました。72歳です。
 私は小さい時に、『にこにこぷん』を観て育ちましたが、この時は作者が誰かとかは気にしませんでした。数年前、ラジオ番組で先生が仰られた「子供には作者は存在しない」は、失礼ながらご最もだったのです。
 そんな私が井出先生に興味を持ち始めたのは、高校生の時でした。おさむおにいさんが『みんなのうた』で『ママの結婚』という歌をうたっていることを知り、大人に近くに連れて失われつつあったものが一気に蘇ったのです。
 けれど、地元の図書館には、井出先生の人物像を知るために必要な文献があまりなかったため、当初は『にこにこぷん』のビデオを観ながら、「ミュージカルが好きで、しつけっぽいのは好きじゃない…」などと、勝手に察するしかありませんでした。じゃじゃまる、ぴっころ、ぽろりのケンカに共感が持てる理由については「それは多分、井出先生の失敗談がベースになってるから…」などと考えました。
 それからしばらく経って、『にこにこぷん』の放送当時の雑誌から井出先生が寄稿された記事を見つけたのですが、意外な事実は特にありませんでした。「『にこにこぷん』ではミュージカルに拘っています」など、私が考えていた井出先生像とほぼ一致していたのです! この勝手な推察が当たったのは、『にこにこぷん』がありのままの井出先生だからなのだと思います。『にこにこぷん』が好きな人なら、別に資料をあれこれ集めなくても、誰でも井出先生の人柄を無意識に知っているはずです。
 この雑誌記事を読み、井出先生を改めて好きだと思ったのは、数々の『にこにこぷん』の劇中歌を作曲された越部信義先生に「いつもお忙しいのに、私の要望に応えて頂いて申し訳ありません」と、感謝の言葉を贈られたところです。そして、先生ご自身については「この仕事は思ったことをそのまま書いてるだけなので、皆さんが仰られるほど、大変じゃないんです」と謙遜されていました。
 井出先生は『ありがとうさようなら』など、誰もが一度は聴いたことがある多くの名曲を作詞されましたが、やはり、越部先生とのコンビで、1日にひとつ、10年間作り続けた『にこにこぷん』の劇中歌の数は驚異的なものだと思います。福田和禾子先生、乾裕樹先生もご参加された『ドレミファ・どーなっつ!』も含めると16年です! 先生ご自身も覚えてない歌もあるのではないでしょうか?
 これほどの功績があれば、巨匠気取りで、『にこにこぷん』の制作秘話などを、もっとあっちこっちで語ってもおかしくないのですが、「子供には作者は存在しない」とのお言葉の通り、主役はあくまで作品で、先生ご自身がキャラクターになり、タレントとして活動をすることは好まなかったのでしょう。無報酬のはずのボランティア活動を、「こんなことしました!」と話題にし、結局は自分の好感度が上がらないと気が済まない人とは大きな違いです。
 井出先生の訃報を聞いてから半月ほど経ってしまいました。誠に申し訳ありません。こんな駄文を作成するだけで、そんなに時間がかかることを考えると、1日で『にこにこぷん』の脚本とその劇中歌を書いていた井出先生は、どんなにご謙遜されても、やはり凄いと思います。
 井出先生、ありがとうございました。
 余計なお世話かもしれませが、世の中には病気や事故などで幼くして亡くなられた子供がたくさんいます。もし、天国で越部先生、福田先生、乾先生と再会されたら、今度はそういう子供たちのために素敵な歌や番組を作って頂けたらとても嬉しいです。井出先生の天国でのご活躍も期待しています。

外部リンク

 「作家で聴く音楽」 山川啓介

 一般社団法人日本音楽著作権協会の公式サイト内にある井出隆夫先生のインタビューです。井出先生のことをもっと知りたい方に参考になればと思います。

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 ※注 『にこにこぷん未完成庭園』は、『にこにこぷん』のファン個人活動として運営しています。公式サイトではありません。